AIは、私の片側の物語を「正義」にしてくれた
最近、AIに人間関係を相談するうえで、一番ヤバいところはここなんじゃないかと思うようになりました。
どうしたって、自分の視点から見えたコンテキストしか渡せないことです。
私はいま、仕事でもプライベートでも、かなり長い時間AIと話しています。
AIに人間関係を相談すること自体を「やめた方がいい」とは言えません。私もやってしまうからです。
誰にも話せないときや、自分でも何を感じているのかわからないときに、頭の中にあるものを一度言葉にしてみる。AIと話すことで少し落ち着いたり、考えが整理されたりすることは、実際にあります。
ただ、揉め事の最中に、
「自分が正しいのか」
「相手が悪いのか」
という判決をもらいに行くのは、かなり危ない。
私がAIに頻繁に話しかけるようになったのは、2022年末ごろです。
最初は1日1時間くらいだったと思います。使えるモデルが変わるにつれて2時間、3時間と増え、去年くらいからCodexを触り始めてからは、仕事を含めると最低でも1日5〜6時間はAIと対話していると思います。
そのせいか、おかげか、外から見ればニートにしか見えなかった私が社会復帰を果たすことになりました
これだけ使っていると、AIにとってコンテキストがどれだけ大事かを毎日のように思い知らされます。
情報が一つ足りない。前提が少しズレている。こちらが重要ではないと思って省略したことが、実は重要だった。
それだけでAIは、堂々と訳のわからない方向へ進んでいきます。
仕事の話ですらそうなのだから、人間関係なんて、正確に伝えられるわけがないんですよね。
相手との会話、その場の空気、声の調子、表情、過去の積み重ね。自分が忘れている一言。相手はずっと覚えているけれど、自分にとっては何でもなかった出来事。
そんなものを全部、正確に圧縮してAIへ入力することはできません。
できるのは結局、自分の目から見えた話をすることだけです。
しかも、しんどいときほど人の視野は狭くなります。
私は喧嘩をすると、かなり周りが見えなくなるタイプです。自分でもわかっています。
だから以前、友人と揉めたとき、よくAIに相談していました。
AIに安心させてもらった
そのときも、心のどこかでは思っていました。
「さすがに人間関係に、AIのアドバイスをそのまま持ち込むのは……うーん」
でも、自分の直感も信じられませんでした。
何か言ったら、もっと悪くなるかもしれない。
感情的な状態ですぐに話すより、少し時間を置いた方がいいのかもしれない。
AIの回答も、だいたいその方向でした。
一度距離を置く。冷静になる時間を作る。すぐに結論を出そうとしない。
文章だけを見ると、すごくまともです。
私はその回答を信じて、すぐに関係を修復しようとせず、いったん放置することを選びました。
でも、本当はわかっていたんですよね。
私も相手も、放置されて平気なタイプではないことを。
私にとっては「冷静になるための時間」だったけれど、相手にとっては「もうどうでもいいと思われている時間」だったらしい。
結果として、大切だったその人との関係は崩壊しました。
もちろん、全部がAIのせいだとは思っていません。
選んだのは私です。
AIは私の腕をつかんで、返信を止めたわけではありません。自分が受け取った回答の中から、自分でその行動を選びました。
それでも、AIの回答を読んだときの感覚は覚えています。
「大丈夫だよね。へへ」
みたいな。
本当は、自分が間違っているかもしれないと思っていた。
すぐに話した方がいいんじゃないかという感覚も、どこかにはあった。
でもAIは、私が渡した片側の話を、ものすごく筋の通った言葉にして返してくれました。
正当化が、うますぎるんですよね。
彼氏や彼女の愚痴を、片方からだけ聞いているときに少し似ています。
話を聞いている側は、「それはひどいな」と言える。でも本当は、もう片方の話も聞かなければわかりません。
AIの場合は、ただ「それはひどいですね」と言うだけではない。
こちらの話を整理して、論点を並べて、言葉になっていなかった感情まで言語化してくれる。場合によっては、こちらが説明していない穴まで想像で埋めて、正義っぽい言葉をつけて返してくれます。
本人は「客観的に整理してもらった」と感じる。
でも実際には、自分に都合のいい物語が、ものすごく読みやすくなって戻ってきただけかもしれない。
回答が雑なら、まだ疑えるんです。
きれいで、論理的で、自分でも言えなかったことを代わりに言ってくれるからこそ、正しく見えてしまう。
「忖度なく」は、片側の検察官を強くする
私は普段からAIに、
「忖度なく言って」
「メタ認知で見て」
「敵対的にレビューして」
とよく頼みます。
仕事では、かなり有効です。
では、人間関係でもこう頼めば安全なのか。
私は、そうは思わなくなりました。
入力が片側なら、「忖度なしモード」は、片側の検察官を強化するだけかもしれないからです。
自分が相手にされたこと、自分が我慢したこと、自分が傷ついたことを並べれば、AIは相手の問題点をかなり説得力のある言葉で指摘できます。
逆に、「全部私が悪い」「私は最低な人間だ」と入力すれば、今度は自分を有罪にする理屈を強化できてしまう。
どちらにも、それらしい判決を作れるんですよね。
AIはその場にいませんでした。
相手の顔も見ていないし、声も聞いていない。どちらが先に何を言ったのかも、こちらが正確に書かなければ知りようがない。
相手がその出来事をどう受け取ったのかも、AIにはわかりません。
それでも、AIは答えを返してくれます。
答えが返ってきたことと、その答えが正しいことは、全然違います。
だから、AIの言葉をそのまま相手にぶつけるのは、かなり危険だと思います。
「AIも君が悪いって言ってる」
「客観的に見ても、こうするべきらしい」
こんなことを言われたら、普通に嫌じゃないですか。
相手からすれば、
自分に都合のいいところだけAIに伝えて、そのお墨付きを持って殴りに来た。
そう見えると思います。
AIで整えた文章をそのまま送ることにも、私は少し怖さを感じています。
これは根拠を示せる話ではなく、あくまで私の感覚です。
文章としてはきれいなのに、なんとなく目の前の相手に向いていない。熱量がないわけではないのに、自分の言葉で話している感じがしない。
整った声明文を読まされているようで、「この人は何を言っているんだろう」「もう話が通じないな」と思わせてしまうことがある気がします。
私はスピリチュアルっぽい話はあまり好きではないのですが、それでも、言葉が誰に向いているかみたいなものは、なんとなく伝わると思っています。
YouTubeでも、撮影した日の熱量より、なぜか公開するときの自分の熱量が動画に反映されているように感じることがあります。
ただの勘違いかもしれません。
でも、人と人が揉めているときに、整いすぎた借り物の言葉を出すことで、二人の距離がさらに遠くなることはあると思います。
判決ではなく、減速するために使う
だからといって、AIを人間関係に一切使うなと言いたいわけではありません。
私も使います。
今後はもっと多くの人が、相談相手としてAIを使うようになるでしょうし、将来的には今より多くのコンテキストをAIに渡せるようになるかもしれません。
でも、少なくとも現状のAIに渡せるのは、ほとんどの場合、自分が切り取った片側の話です。
だったら、裁判官として使わない方がいい。
判決を求めるのではなく、送信する前に一度減速するための場所として使う。
「これは事実なのか。それとも私の解釈なのか」
「相手の意図を、勝手に決めつけていないか」
「相手の立場から見たら、どんな反論があり得るか」
「いま本当に送る必要があるのか。数時間待ったら何が変わるか」
「どちらが正しいかではなく、関係を壊しにくい次の行動は何か」
そういう問いを投げるために使う。
別れ、結婚、退去のような大きな決断を、AIとの一対一の会話だけで決めないことも大事だと思います。
そして、一番危ないのは、AIの回答を読んで、
「ほら、私が正しかった」
気持ちよくなったときです。
そこは、一回疑った方がいい。
AIが正しいというより、自分が渡した物語の中で、自分が正しく見える回答が返ってきただけかもしれないからです。
逆に、
「やっぱり全部私が悪かったんだ」
と絶望したときも、同じです。
AIはあなたを正当化する理屈も作れるし、あなたを有罪にする理屈も作れる。
自分が渡したコンテキストの中で、もっともらしい文章を返しているだけかもしれません。
しんどいとき、頭の中を整理する相手がいること自体は助けになります。
誰にも言えないことを、一度言葉にして外へ出す。それだけで少し落ち着ける日もあります。
でも、AIに判決を求めない。
AIの回答を、相手を裁くための証拠にしない。
自分を正当化するためではなく、相手を殴る言葉を送る前に、一回止まるために使う。
私は今のところ、そのくらいの距離感が一番安全だと思っています。
自分の直感を信じられない日に、AIの言葉まで絶対視しない。
難しいですけどね。
私も全然、できない日があります。
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