当事者として登壇して気づいた、メンタルヘルスの場づくりで本当に大事なこと
2026年10月、福岡で開かれた「こころの病のピアサポート講座」(こころの病のピアサポート講座実行委員会主催)に、ゲスト講師として登壇しました。
僕はシステムエンジニアとして働いていた頃にうつ病になり、仕事を離れました。のちにADHDの診断も受けています。いまはその経験を、当事者の立場から発信しています。
今回は講演のあとに、参加者のみなさんと輪になって体験を話す「グループピアミーティング」にも加わりました。終わってみると、話した内容と同じくらい、場のつくり方から学ぶことが多い一日でした。

平日の昼間に、県外からも
開催は平日の昼間でした。正直、そんなに人は集まらないだろうと思っていました。
ところが会場はしっかり埋まり、県外から足を運んでくださった方もいました。当事者の方だけでなく、ご家族の立場の方、精神保健福祉士やケースワーカー、グループホームの職員さんなど、支える側の方も多かったのが印象的です。
「当事者の話を直接聞いてみたい」というニーズは、当事者本人だけでなく、周りで支えている人たちの中にも確かにある。それを肌で感じました。
前に立つと、反応は全部見える
講演の持ち時間は約1時間。久しぶりにかなり緊張しました。
前に立つと、聞いている人の表情は驚くほどよく見えます。メモを取りながら聞いてくださる方もいれば、少しうとうとしている方もいる。そこで、反応が薄いと感じたパートは話を短くしたり、別の角度からの具体例に切り替えたりしながら進めました。
参加者の立場がばらばらな場では、全員に同じ温度で届く話はありません。その場の反応を見て組み替えることも、講師の仕事だと改めて思いました。正直に言うと、組み替えに必死で時間配分が前のめりになったのは次回への宿題です。
質問は紙に書いてもらう形式でした。「読み上げてもいいか」に本人がチェックを入れた質問だけを取り上げる仕組みです。人前で手を挙げにくい人でも質問できて、知られたくない人は守られる。いい仕組みだなと思いました。
「体調が悪くても、聞ける」場所があった
今回いちばん驚いたのは、主催スタッフのみなさんの配慮です。
会場の後ろには仕切りで区切られたスペースがあり、ベッドが用意されていました。「話は聞きたいけれど、体調がしんどい」人が、横になったまま耳だけで参加できるようになっていたんです。
開始前のアナウンスでも、参加者が無理をしないための声かけを丁寧にされていました。企業研修などで当事者がいる場では、こうした前置きは僕が自分でお願いすることがほとんどです。ここまで主催者側がきちんと伝えてくれたのは初めてでした。
輪になって話すのは、思った以上に緊張する
講演のあとは、15〜20人ずつのグループに分かれてピアミーティング。一人2分ほど、決められたテーマで自分の体験を話します。僕は前半と後半で別のグループに入りました。
参加してみて、素直に思ったのは「これ、めちゃくちゃ緊張する」ということです。
初対面の人と椅子で輪になり、持ち時間を測って「はい、どうぞ」。就活の集団面接を思い出しました。話す内容も重いものが多く、人数が多いと一周するまでにかなり時間がかかります。座って聞いているだけでも、正直しんどさがありました。
そして、ピアミーティングの良さを実感するには、3〜4回は参加して場に慣れる必要があるのではないか、とも感じました。
これは職場にもそのまま当てはまると思います。メンタル不調の人がいる職場で、面談やグループワークの形だけを用意しても、それだけでは本音は出てきません。
・人数を少なくする
・回数を重ねて、場に慣れる時間をつくる
・「しんどければ途中で休んでいい」を、仕組みとして先に用意しておく
当事者として参加者の側に座ったからこそ、話せることがあります。
企業・行政のご担当者さまへ
今回の福岡講演で改めて感じたのは、メンタルヘルスの研修は「何を話すか」と同じくらい、「どんな場で聞いてもらうか」が大事だということです。
僕がお話しできるのは、うつ病で働けなくなった当事者が、何に苦しみ、どんな関わりに助けられたのか。そして、支える側や職場が明日から変えられることです。参加者の立場や人数に合わせて、話す内容も場のつくり方もご相談しながら決められます。
「当事者の声を研修に取り入れてみたい」「まだ内容は決まっていないけれど、一度相談してみたい」という段階でも大丈夫です。
講演・研修のご相談はこちら
福岡でお会いしたみなさん、運営スタッフのみなさん、本当にありがとうございました。
すでに登録済みの方は こちら